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「病理検査技師との関係に関する小委員会」主催の病理検査士(PA)に関するアンケートの総括

はじめに
 
病理医と病理検査技師がより良好な関係を築くために,病理検査士(PAと略す)導入の是非を含む諸問題を検討することを目的として,日本病理学会企画委員会(坂本穆彦委員長)のad hoc小委員会,「病理検査技師との関係に関する小委員会(中島 孝委員長)」が平成16年度に発足し,平成17年度まで討議を行ってきた(当小委員会の活動報告に関しては日本病理学会のホームページ,委員会報告の項を参照.).小委員会としては「はじめにPAありき」ではない立場を前提として論議を重ねてきたが,かかる病理医の将来にとって重要な案件に関しては会員全員,特にPAと深く係るであろう診断病理医から忌憚のない意見を広く伺うことが一番重要であると考え,平成17年度に公的なアンケートを企画,施行した.アンケートは各支部にて主として交見会など診断病理の勉強会時に配布,回収された(北海道支部のみはインターネットにより小委員会に結果が回答された).小委員会にて集計および解析し,中間的な結果は平成18年4月30日に開催された日本病理学会総会のワークショップにおいて発表されたが,今回は総計に基づいた最終的な結果を報告する.
 
アンケートの対象および設問
 前述のとおり病理学会全会員を対象とした.支部(北海道,東北,関東,中部,近畿,中国・四国,九州・沖縄)ごとに回収し,正確な回収率の報告がなかったため,全体における回収率は明らかにしえない.
 
アンケート集計結果とその解析
 集計とその解析はFileMaker Pro ver. 5.0 およびMicrosoft Excel 2000を使用して行った.
 
1.回答者及びその所属について:回答総数473名
 病理専門医は385名(81%),82名(17%)はその資格を有していなかった(無回答6名).一人病理医は105名(22%),複数であるが病院勤務(以下 病院病理医と称す)は104名(22%),病理部を含む大学に所属する者(以下 大学と称す)は219名(46%),その他は37名(8%)であった(無回答8名).また,病理診断を主業務とする者は390名(82%),主業務としない者は69名(15%)であり,病理専門医でなおかつ病理診断を主業務とするもの(以下 {専門医∩診断業務}と記す)は335名(71%)であった.支部ごとの内訳は表1および図1に示した.
 
2.小委員会に関する認知度について:
 372名(79%)がPAについての議論が公的に行われていることを認知していたが,91名(19%)が知らないと答えた(無回答10(2%)).中部支部(94%が認知),北海道支部(90%),東北,関東,近畿,中国・四国の各支部は約80%が認知していたが,九州・沖縄支部では57%にしか知られていなかった(表2).
 
3.小委員会の提言:
 (「病理診断に関する最終責任は病理医にあり,全ての病理業務は病理医(病理専門医)の指導の下に行うべきである」)への賛否:413名(87%)が賛意を表明していたが,50名(11%)が反対であった(無回答 20名(4%)).反対する理由としては,「病理医が責任を負えば,技師に全てをやらせても良い」との解釈も成り立つためという回答が目立った(別紙1参照).
 
4.現在技師に任せている業務について〔複数回答可〕:
 多いものから順に列挙すると,薄切・一般染色などの標本作製 463名(98%),検体受付などの事務業務 453(96%),免疫組織化学的染色法 432(91%),術中迅速凍結切片作成 429(91%),解剖介助 411(87%),生検材料の処理 398(84%),電子顕微鏡の標本作製 187(40%),となり,あとは臨床医への結果報告 58(12%),手術材料の切り出し 51(11%),抗酸菌染色や真菌染色などにおける菌体確認 49(10%),遠隔病理診断の送信 24(5%),電子顕微鏡の所見読み 19(4%),免疫組織学的染色法の結果判定 6(1%),組織標本全般のスクリーニング 7(1%)と極端に少なくなり,解剖執刀 5,消化管生検のみの組織標本スクリーニグ 3名,解剖診断1,組織診断は0名であった.その他としてマクロ写真の撮影 2名,統計処理 1名,標本およびガラスの整理 1名であった.
 
5.業務の委譲に関して:
 総計では積極的に業務委譲が必要である 17名(4%),一定の条件が整えば,必要と思う 210名 (44%),業務委譲は必要ない 225名(48%),無回答 21名(4%)であった.病理専門医では積極的委譲は12名(3%),条件付委譲は167名(43%),委譲の必要なしと答えたものは193名(50%)であった(以下,この順序で,(12名, 167名,193名)[3%,43%,50%]と記載する).一人病理医では(3名 , 49名 , 51名)[3%,47%,49%],病院病理医では(5名 ,37名, 59名)[5%,36%,57%],大学では(8名, 100名, 105名)[4%,46%,48%]であった.病理診断を主業務とする者では(16名, 171名, 192名)[4%,44%,49%],主業務としない者では(1名, 35名, 31名)[1%,51%,45%]となった.さらに{専門医∩診断業務}では(11名, 145名, 170名)[3%,43%,51%]という結果を得た.支部ごとの内訳は表1,2および図2,3に提示した.
 
6.業務委譲が必要だと思われる時,委譲可能な業務について(複数回答可)(表2,図4,5):
 多い順から,抗酸菌染色や真菌染色などにおける菌体確認113(24%),手術材料の切り出し 69(15%),免疫組織学的染色法の結果判定 68(14%),電子顕微鏡の標本作製 41(9%),消化管生検のみの組織標本スクリーニング 41(9%),遠隔病理診断の送信 36(8%),解剖執刀 33(7%),電子顕微鏡の所見読み 29(6%),組織標本全般のスクリーニング 24(5%),生検材料の処理 19(4%),臨床医への結果報告 15(3%),解剖介助 15(3%),術中迅速凍結切片作成 9(2%),免疫組織化学的染色法 8(2%),薄切・一般染色などの標本作製 5(1%),解剖診断 5(1%),検体受付などの事務業務 4(1%),組織診断 2(0%),その他 4(免疫染色,特殊染色のオーダー,診断精度管理).
 
7.PA制度が導入された場合,その教育に従事することが可能かについて:
 この設問に関しては本来,「業務委譲が必要である」との回答者のみが対象であったが,一部の支部では独立した設問とされていた.そのため,今回の集計には「業務委譲の必要はない」の回答者の結果も混在している.168名(全体の36%,回答者の53%)が教育は可能,37名(全体の8%,回答者の12%)が不可能,110名(全体の23%,回答者の35%)は「わからない」と回答した.各支部での状況,所属別による結果は表3に記載した.
 
8.自由意見(別紙2参照):
 総計92名の意見が寄せられた(北海道支部 5名,東北 6名,関東 18名,中部 27名,近畿 11名,中国・四国 12名,九州・沖縄 13名).
 
まとめ
 PAの導入に関しては,病理学会としての明確な定義が提示されておらず,職域も不明確なため,同一の対象について論議を交えるという状態にはなっておらず,百家争鳴,様々な議論が霧中を去来しているのが現状であろう.しかし,「PAとは現行の病理医業務の(程度の差はあれ)一部を委譲されて行う職務である」という前提には共通の理解があると考えてよいと思われる.したがって,もしPA制度が導入された場合,もっとも深い関係を有するのは病理医であり,会員の中でも診断に従事している病理医の意見を第一に尊重すべきだと考えられる.また,病理医の立場からPAの導入を討議する場合,まず業務委譲の必要性の有無を検討することが最重要課題であり,次に委譲が必要であると考える場合,どのような業務の委譲が許容できるかが焦点となるであろう.病理医の日常業務に深くかかわるPAの是非は病理医全体の将来にとって重大な問題であることはいうまでもなく,病理学会会員,特に診断病理に係る者全てが熟慮しなければならない.当小委員会では,このような考えの下に各支部の協力を仰いで今回のアンケート調査を行い,可能な限り多数の会員の声を聞くべく努力した.その結果,全国から473名(病理専門医 385名)の回答が得られた.病理学会員総数や病理専門医総数(それぞれ3970人,1882名,平成17年3月10日の時点)に比し回収率が低い印象を受けるかもしれないが,学会から全員に配布したわけではないこと,各支部の交見会などへの出席者が主対象であったことから,むしろ現在実働している病理医の意見がよく反映されていると思われる.
 
1.集計結果について:
アンケートの主要な結果は以下のようにまとめられる.総集計,および専門医∩診断業務を対象として抽出した(図4,5,6).
 
1) 全回答の47%({専門医∩診断業務}(総計335名)では51%)が業務委譲の必要を認めていない.この結果には地方差がみられ,例えば関東支部では34%,中部支部では62%を示した({専門医∩診断業務}ではそれぞれ40%,63%)(表1,2,図2,3参照).
2) 全回答の44%({専門医∩診断業務}では43%)が条件付委譲可で,菌体確認,手術材料の切り出し,免染の結果判定が委譲項目の上位であるが,それぞれ全回答の,24, 15, 14%である({専門医∩診断業務}ではそれぞれ17, 13, 12%).委譲可と回答した者(総計227名)を母集団とすると,菌体確認50%,手術材料の切り出し 30%,免染の結果判定 30%(委譲可と回答した{専門医∩診断業務}(総計156名)ではそれぞれ 37%,27%,26%).であった.「積極的に委譲」という回答者は非常に少なかった.
3) 消化管スクリーニング,組織標本スクリーニングに関しては,それぞれ全回答の8%,5%が委譲可と答えている({専門医∩診断業務}ではそれぞれ8%,6%).委譲可と回答した者を母集団とすると,消化管スクリーニング 18%,組織標本スクリーニング 11%(委譲可と回答した{専門医∩診断業務}ではそれぞれ 17%,13%)であった.
4) 組織診断に関しては,全回答の0.4%(委譲可を母集団とすると0.9%),{専門医∩診断業務}では0.9%(委譲可を母集団とすると1.3%)が委譲可と答えていた.
 
 以上によれば,約半数はPA制度導入の必要性は認めておらず,条件付なら導入を認めてもよいと回答した者では,その委譲可の項目として菌体確認,手術材料の切り出し,免染の結果判定などが主であるが,それも{専門医∩診断業務}からみれば約1/6から1/10に過ぎない.委譲可とする回答者の中でも,菌体確認は約1/3,手術材料の切り出し,免染色の効果判定は約1/4であった.組織診断に至ってはほぼ全員が業務委譲は認められないと回答していた.「医行為」ともっとも関連があり,PA制度導入時に業務の委譲項目として論点になるのは,肉眼診断につながる「手術材料の切り出し」であると推測されるが,多数の診断病理医はそれを望んでいないという結果である.
 
病理検査士(PA)に関する アンケート01
 
病理検査士(PA)に関する アンケート02
 
病理検査士(PA)に関する アンケート03
 
病理検査士(PA)に関する アンケート04
 
病理検査士(PA)に関する アンケート05
 
病理検査士(PA)に関する アンケート06
 
病理検査士(PA)に関する アンケート07
 
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