第1回夏の学校を終えて ~謙虚で、しかし勇気を持って~

日本病理学会東北支部長 手塚 文明


 今年の夏は猛暑でしたが、そのさなかに山形蔵王温泉で「第1回・夏の学校」が開かれました。これは、東北地区の医学生を対象にして病理医が病理学の興味と可能性について語りかけるという初めての企画で、多くの学生参加を得て希望のあるスタートとなりました。これを準備して下さいました山川光徳教授をはじめとする実行委員会および山形大学病理学教室の皆さんに心から感謝申し上げます。また、忘れることが出来ないのは、この企画を支持して物心両面の励ましをさしのべて下さいました諸先輩の温かさで、厚く御礼申し上げる次第です。


 この企画は、病理医と学生の直接的な対話というだけでなく、病理学を含む医学教育のあり方に個別大学の枠を超えた視座が加わる、そうした動きの始まりであり、将来的な意義は決して小さくないように思います。情報開示と客観評価はどの世界でも求められ、このプロセスを通して新しい価値が創造されていくことになるのでしょう。平成15年度は榎本教授(秋田大学)にお世話して戴くことになり、山形で点った「希望の灯」が絶えずに継続されていくことを祈っています。


 大きな変革の21世紀、私たち病理医を取り巻く情勢にも幾多の困難があります。その克服は、病理学が学問としての重みを回復すること、そして医療の実践を通して市民・患者の間に認知と支持を拡大してゆくこと、それ以外には為し得ないように思います。私たちは、大学で研究の前線にあっても又病院で医療の現場にあっても、自らの職業を歓び、仲間を愛し、勇気と希望をもって歩みたいものです。東北支部の会員のあちこちでチャレンジングな試みが沸々と湧き上がり、それらが結び合って大きな力が生まれてきそうです。


 まもなく冬の学術集会が近づいてきます。また一同に会して語り合える楽しみを待ち望んでいます。

(2002年10月30日)


支部長あいさつ2002